日本の魅力再発見日本の魅力再発見 祭チャンネル

  • 開催月から探す
  • 地図上から探す
  • ジャンルから探す
キーワードで検索

【PICK UP】祇園祭 山鉾巡行

路を巡る華麗な「山」と「鉾」

祇園祭の中でもハイライトとなる山鉾巡行は、毎年7月17日(前祭)と7月24日(後祭)に行われます。巡行する鉾のうち最大のものは12トンにも達し、組立・巡行・解体には180人もの人手を要します。

蔓延する疫病を防ぐ目的で催された御霊会が祇園祭の始まりとされていますが、その祇園祭には時代の変遷とともに様々な要素が加えられていきました。
室町時代に下京地区に商工業者の自治組織が成立すると、町ごとに趣向を凝らした山鉾を作って巡行させるようになりました。室町時代中期には今日に繋がる山鉾巡行が成立したと見られています。
「山」と「鉾」の大きな違いは形状で、「山」は御神体の人形と山岳信仰に基づいて山を表す真松がたっています。一方「鉾」は、屋根の中央に長い真木(しんぎ)と呼ばれる鉾を立て、そのてっぺんに鉾の象徴でもある鉾頭を飾り、その下に「天王」といわれる御神体の人形を安置しています。
現在見ることのできる豪華絢爛な鉾は、桃山時代から江戸時代にかけての貿易により町衆が舶来のゴブラン織や西陣織などを競って用いるようになったためです。
江戸時代には三度の大火に見舞われ多くの山鉾を焼失することになりましたが、復興を繰り返し、現在は33基あります。
山鉾行事(宵山と山鉾巡行)は1979年に国の重要無形民俗文化財に指定されたほか、2009年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されました。33基のうち29基は重要有形民俗文化財にも指定されています。
山鉾町では山や鉾を町内で大切に守り、祇園祭を受け継いできました。2000年、2021年と2年連続で巡行は中止されましたが、2021年は伝統技術継承のため2年ぶりに山鉾建てが実施されました。

 

動く美術館!?

美しい織物、染物、金物、彫刻など様々な素晴らしい美術工芸品で装飾された重要有形民族文化財の山鉾。町を巡る姿はまさしく「動く美術館」のようです。
山鉾には日本古来の伝統工芸品だけでなく海外の工芸品も数多く使用されています。インド、中国、イタリア、ベルギー、ギリシャ、トルコ…。すべてではないですが紹介してみたいと思います。

 

  • 長刀鉾(なぎなたぼこ)の懸物
    中国やインドの16~18世紀製の歴史・美術的にも希少な絨毯(現在は復元品や新たに新調したものを使用)
  • 函谷鉾(かんこぼこ)の前懸
    16世紀にベルギーで作られたゴブラン織りのタペストリー(ゴブラン織りとは羊毛を使って織り上げた「毛綴織」と呼ばれるもの)
  • 放下鉾(ほうかぼこ)の前懸や胴懸
    トルコやコーカサス製の花文様の絨毯
  • 白楽天山(はくらくてんやま)
    胴懸 ベルギー製
    見送 18世紀フランス製のタペストリー「水辺の会話」
  • 伯牙山(はくがやま)の掛軸
    15世紀の中国・明時代の作品(1988年に新調)
  • 鯉山(こいやま)の装飾品
    16世紀にベルギー、フランドル地方で作られたゴブラン織りのタペストリー(重要文化財)

自分が海外を訪れたときに、その国の伝統行事に日本生まれのものが使用されていたら嬉しくなりますよね。祇園祭を訪れる外国人はたくさんいます。山鉾を目にした彼らは自国の文化を誇りに思い、また私たちと同様に異国の文化との融合に喜びを覚えるのではないでしょうか。何百年も前に海を越え日本に辿り着いた各国の織物は、その姿を変えることなく日本の夏を艶やかに彩る一部となっています。海の向こうでどのような人々がどのような気持ちで織ったのか、そんなことを想像しながら眺めてみるもの良いかもしれませんね。

ご利益ってナニ?

「家内安全」「恋愛成就」「学業成就」「健康運アップ」「仕事運アップ」「金運アップ」。神社へ行くとつい手を合わせて願い事を思い浮かべてしまいます。山鉾にも、厄除け、縁結び、立身出世などなど、様々なご利益があるとされています。
ご利益という言葉は仏教用語です。仏教では利益(幸せ)は自分の行いによって決まると教えられています。
ご利益とは、神様から「得」をもらうのではなく、自分が「徳」を積む生き方をする中で、誰かから、どこかからもたらされるものなのではないでしょうか。自分以外のものの存在を意識し、また感謝し、誰が見ていなくとも人として恥じない生き方をすることで少しずつ徳を積み重ねていく。神様はきっとあなたのそんな姿を見ているはずです。
巡行している山鉾を目にしたら「得」ではなく「徳」という漢字を思い浮かべてみるだけでも、少し違った景色が見えてくるかもしれません。